三途の川のお茶屋さん



朝一番に訪れたお母さんは、最終便の出航まで静かに私を見つめながら、店内に留まっていた。

出航の時刻が迫ると、店内のお客様が続々と船着き場に向かう。

お母さんが席を立ったのは、一番最後だった。

お会計の前で、私は再びお母さんと向き合っていた。

「美味しいお団子をごちそうさまでした。えぇっと、お代ね、お代……」

お母さんはハンカチを取り出したのと反対のポケットをガサゴソと探していた。

「お代は、よかったらさっきのハンカチをいただけませんか?」
「え? これ?」

お母さんはキョトンとした顔をしている。

「絶対に大事にします。ずっと、大切にします」
「……ふふふ、いいわよ。なんでかは分からないのだけど、とっても大切な物のような気がしていたの。だけどそんなふうに言ってもらえるなら、どうかお嬢さんが持っていて?」



< 47 / 329 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop