今日も君につままれ包まれる
だって少なくとも司書さんはいるはずだし、さっきまで賑わっていたはずの外の道に誰も歩いている人がいない。




なんていうか...こう帰ったという気配が無く、ふっと急に居なくなった感じ。





(それとも私が本に熱中し過ぎただけかな...)




なんだか不気味...
(早く、帰ろう。)





急いで本を戻し図書室を出る。


窓から夕日が差し込み廊下が赤く染まっている。
(やっぱり誰もいない...走っちゃおう)






けれどいくら走っても玄関に繋がる曲がり角に辿り着けない。



(どうして?!曲がり角が見えてるのに進まない!!!)







これってヤバいんじゃ...






その時、目の前に人影が見えた。
良かった、まだいた...




いや...あれって...





その人影は明らかに人間がするような動作ではなく、ユラユラと不気味に動きながらこちらに近付いてきた。






「ゆ、幽霊...?え、ぇ!」
(と、とにかく逃げなきゃ!)




私は急いで元来た廊下を猛ダッシュした。





「あっ!?」



軽いパニックを起こした私は、朝と同じように盛大にすっ転んでしまった。




(いたい...)



その間にもその人影は私に近づいてくる。




〈クッテヤル...オマエヲ...〉





確かにそう聞こえた。


いくら不幸体質な私でもこんなのってないよ…私、私死んじゃうの?




立ち上がる気力も何だか消え、失せただただそこに目をつぶっているしか出来なかった。



『見つけた!』




急にその声がしたかと思えば、扇子らしき物を振りかざし、いつの間にか怪しい人影は消えていた。



そして助けてくれた声の主は私の目の前にしゃがみ込んだ。




『君、大丈夫だった?』


そう言って私の手を取って起き上がらせた瞬間ーーー




『!』
彼は一瞬驚いた様な顔を見せ、





『やっと、見つけた』



そう言ってニヤリと笑ったのを見て私は気を失った。
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