キスすらできない。


うん…わかっちゃいたけど狭いな。

先生の部屋のベッドならクイーンサイズだから余裕があるけど。

ああでも…引っ付いて寝れる言い訳にはなるわ。

引っ付いて…大丈夫だよね?

生活を共にして数週間。

なんだかんだ先生の方から引っ付かれる事はあれど自分からそれをしたことはない。

そりゃあ、抱きつきたいと欲求はあるし疼くのだけども、如何せん私の意地っ張りな性質が先立ってしまって素直にその身を寄せる事が出来ないのだ。

だけども今は相手の意識もない絶好のチャンス。

ここでせずにいつ実行する!?

いざ…実食!!

と、妙なテンションでスルリと腕を絡めつけた第一の感想は…。

あ……温い。

当たり前だけども先生の匂いだ。

細いのに骨格は完全に男の人で。

なんか、抱きしめられるのとは違う。

抱きしめなければ分からない先生の感触…だ。

う…わぁ…。

なんか……泣ける。

そんな事を思った時にはすでに片方の目からつーっと涙が一滴。

悲しいとか寂しいなんて感情からじゃない。

寧ろ……感涙。

今腕の中に確かにある存在感に感極まって涙として零れてしまったのだ。

改めて、自分のものなんだと。

自分の元に帰って来てくれる存在なんだと再確認した。

こうして同じベッドで眠って朝まで迎えられる人。

それを当たり前に繰り返せる人。

私の……

「音…葉……」

あ……なんか言った後に羞恥心。

普段は照れくさいのもあってなかなか呼べない癖に。

まあ、先生も基本『ぴよちゃん』呼びなんだからおあいこよね。

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