キスすらできない。


されるがまま。

受け身のまま。

可笑しいな。

キスの仕方が分からない初な子じゃあるまいし。

もっと上手に応えられる自分であった筈なのに。

なのに……なんでか……発揮できない。

苦しいから?

………違う。

苦しいのに……気持ち良いから。

気持ち……良い。

余計な理屈を放り投げてその結論だけ拾い上げてしまえば、実に欲求に素直にスルリと先生の体に巻き付いた自分の腕。

まるでもっと欲しいと強請るように抱き寄せ返していて、それに応えるように更に深みを増していく口づけと。

自分の身体が緩やかに体勢を変えられているなんて事に気が付いたのは背中にベッドの感触を得た直後か。

流石に『あらっ?』なんて思ったタイミングに楽になった呼吸と視界に明確な先生の妖艶な姿と。

呼吸は楽になったけれど……。

なんか…口の中が疼く。

なんか……

「……物足りないな」

そう。

そんな風に。

まるで自分の心を代弁した様な先生の零した一言。

それに同調の声を上げるより早く再び押し重なってきた唇には『んっ』と変に甘い声が漏れたと思う。

でも、先程の様な濃密な重なりではなく、今度は言葉を許すような啄みが繰り返されるのだ。
< 164 / 167 >

この作品をシェア

pagetop