キスすらできない。


重ねて食んで、また重ねて。

そんなじゃれる様な口づけと一緒に、

「………年甲斐もなく……まぁたワクワクしてたんですよ」

「んっ……?」

「昨日の予想外に気落ちしながらも……新しいワクワクを覚えながら帰宅したんですよ」

「はぁっ……新……しい?」

「一つは……帰ったらとにかく……キスをしようと。……こんな風に、泣かせるくらいに感情任せな」

言葉と一緒、自分の目に浮かんで今にも零れ落ちんばかりの涙を拭う先生の指先は実に優しいのに。

間近で絡む双眸は優しさよりも意地悪が際立って見える。

先生というより男の人の顔だ。

そんな事を感じたと同時、

「キスしたら……泣かせるくらい感情任せに抱いてしまおうと」

「…………」

「明るみの下で、日陽の姿がはっきりくっきり捉えられる日の下で、どんな顔でどんな声で……どんな風に啼いて魅せてくれるのか全部確かめて全部焼き付いてしまおうと」

「っ……」

「暗闇で抱くよりずっと良い。……そう思ったら……ワクワクして止まらなくて」

「ちょっ……待っ……先……」

「もう何十年も待ったよ」

「っ………」

「と……いうか、寝起き一発に俺にしっかり抱きついて眠ってる日陽に我を忘れて犯さなかっただけ紳士だと思ってほしいな」

「っ~~」

「ビックリするぐらいがっちり抱きついてるんだもんな。全然外れなくて……ちょっと驚いた」

「す、すみませ……」

「驚いたけど……可愛かった」

「っ……」

「あまりの可愛さに自室にお持ち帰りした程に」

「も……苛めないで。謝りますからぁ……」

「………嫌だ」

「っ……はひっ!?」

「寧ろ……苛めるのは今からだろう」

う……うわぁ……。

なんて艶やかな実に良い表情。

まるで先生じゃないみたいに……。

って………えっ?


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