キスすらできない。


まさか……この先も続行します?

いやね、雰囲気から、会話の流れから流石にこんな筈じゃあとは叫ばないけれど。

叫ばないけれどもそれでも焦りや戸惑いが大ですよ先生。

何が原因ってとてつもなくSっ気たっぷりな発言をほのめかした先生のせい。

これまた昨日とは別の構えを必要とするような。

なのに、構える時間など与える気なんかなさそうなどこか獰猛な先生の姿には逆上せる感覚より怯む感覚のが少々勝る。

だって、よくよく考えたら『キスマークはぬるい』とか言って噛みついてくるような人じゃん!?

あれ?

私なんか身売りするの早まった?

「さぁて、」

「っ……」

「年甲斐もなく、ワクワク待ちかまえてた初夜を迎えようか?日陽。安心しろ、俺の為の準備の数々も丁寧に一つ一つしっかり感じながら抱いてやるから」

「待っ……」

「待たないって、」

「っ_____」

何一つ安心じゃない。

寧ろ自らを美味しそうに下味付けてご機嫌だった昨日の自分に嘆きたい。

一番安心できないのは実に妖しく凄艶な笑みでそれを言ってのけた先生に。

なのに、唇が重なった直後にはそんな杞憂を一瞬で忘れるのだ。

忘れる程甘く極上。

「……はぁっ…………嫌いになるか?」

なのに、思い出させるように意地悪。

悪いなんて微塵も思っていないだろうくせに、優しく頬を擽って苦笑してまでみせて。

そんな姿を濃密なキスで乱された呼吸を荒げて睨みつけるくせに。

「………嫌いになれてたらここに居ません」

私もまた形ばかりの反抗なのだ。

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