美しい敵国の将軍は私を捕らえ不器用に寵愛する。

奇襲

戦場でありながら、持ち前の精神力の強さで熟睡していた魏冄は、兵達の叫び声に起こされた。

魏冄はすぐに寝台から立ち上がり、兵達の元に行き言った。
「何が有った?」

兵達は驚いて言った。
「白起将軍が精鋭を率いて、匈奴の部隊に奇襲をかけました。」
魏冄は驚いた。

「なんだと?あの馬鹿。何を考えている。死ぬ気か」

魏冄は珍しく冷静さを欠き、白起の無謀な行動に怒り狂った。
その様子は恐ろしく、周りの人間は皆、声をかけることが出来なかった。

しかし、少し暴れると、落ち着いたのか言った。
「しょうがない。白起は見捨てる。全軍撤退だ。」

魏冄はそう言い、部隊に撤退の準備をさせた。
そして、高台から白起と匈奴の戦を見た。
「何だ。これは。白起が押しているじゃないか?」

魏冄は信じられなかった。
いくら奇襲が成功したとはいえ、部隊の数を考えると、これ程の優勢はありえない。
魏冄は思わず、笑ってしまった。

「馬鹿げてる。理屈じゃない。あいつは神の子だ。」

そして魏冄は大急ぎで、部隊に戻るといった。
「撤退はやめだ。全軍突撃。白起を助けるぞ。」

この作戦は見事に的中、秦軍は匈奴を撃破し、魏冄は自らの初陣を素晴らしい勝利で飾ったのだった。
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