社宅は社長の家の2階でした【佳作受賞】
自分の席に向かったのどかは、机上の名刺を見て、声を上げた。

「え!? 課長!? ですか!?」

そう。俺はのどかを秘書課長にした。

この会社には、秘書の事が分かる人間なんていない。

仕事内容を知りもしないのに、形ばかりの上司にするなんて、無駄な事だ。

「ああ。
秘書課のメンバーは1人しかいないんだから、
必然的に課長でしょ?
今後、各役員に秘書を付けるかどうかは、
佐倉さんの働きにかかってるからね。
がんばって。」

「こんな大役、自信はありませんが、精一杯、
勤めさせていただきます。」

おお!?
意外にすんなり引き受けたな。

それだけ、自分の仕事に自信もプライドもあるんだろう。


とりあえず、今、頼む仕事もないので、10時からの会議で、俺用の議事録を作るように指示した。

のどかは、まず出席者名と席次を聞いてきた。

そんなのいつも適当だから、行ってみないと分からない。

そう伝えると、必要な物を持って、会議室に1番に乗り込んだ。

どうやら参加者が席に着くたびに、名前と役職を聞いて、座席表を作っていたらしい。

会議が始まると、ICレコーダーで録音しながら、発言をそのままタイピングしていた。

レコーダーは、あくまで、保険のようだ。

説明のためのホワイトボードやプロジェクタで表示された資料は、写真に撮っていた。

出来上がった議事録は、ありきたりな作文ではなく、資料を余す事なく詰め込んだ完璧なものだった。

これは、ものすごい拾い物かもしれない。

のどかは、のどかであるだけで、俺にとってはかけがえのない存在だが、今後、のどかが秘書課長として、同じスキルの秘書を育ててくれたら、素晴らしい戦力になる。
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