決して結ばれることのない、赤い糸
「顔や声は思い出せないけど、その笑顔が好きだったことは覚えてるって」


涙が頬を伝う。


好きなままでいるのは、わたしだけだと思っていた。

隼人は、もう前しか向いていないと思っていたから…。


でも、そうじゃなかった。

隼人も記憶の中で、わたしのことを探してくれていたんだ。


静かに涙を流すわたしに、クミちゃんはハンカチを差し出した。


「隼人にも本当のこと話したら、きっと喜ぶと思うよ」


クミちゃんは、優しくそう語りかけてくれる。


『俺たち…、前にどこかで会ったことない』


昨日、隼人が言ったあの言葉――。

隼人も、わたしになにかを感じてくれていた。


…でも、言わないと決めたから。


わたしは首を横に振った。


「ありがとう、クミちゃん。隼人が心の中で想ってくれていたって知れただけで、もう十分だから」
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