決して結ばれることのない、赤い糸
階段から落ちたときに、頭を打ったからかな。

自分でも、夢と現実の区別がつかないなんて。


夢なら早く覚めてほしい。


『かりん』と呼ばれるのはうれしいけど、それが夢だとわかったら…悲しいから。


だから――。


「かりん」


再び呼ばれるわたしの名前。

なかなか覚めてくれない夢に困惑する。


…しかし。


「かりん、俺のことわかる?」


わたしの目の前で手をヒラヒラとさせて、顔を覗き込む隼人。


そんな隼人と目が合ってハッとする。


これって、…本当に夢なの?


隼人がわたしの頬に手を添える。


その手のぬくもりはとてもリアルで――。

自然と涙があふれた。


「もしかして…、夢じゃない…?」


わたしの問いに、隼人も目を潤ませてうなずいた。


「夢じゃないよ。ずっと長い夢を見ていたのは、…俺のほうだった」
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