決して結ばれることのない、赤い糸
「いえいえ、とんでもな――」


と言いかけた鷹さんが、口をポカンと開けて固まった。


暗がりだった夜道を、月明かりが明るく照らす。

その月明かりに照らされたお母さんと鷹さんは、顔を見合わせる。


すると、なぜかお母さんも固まってしまっていた。


「…お母さん?」

「鷹さん…?」


妙な空気に、わたしと隼人は交互に2人に視線を移す。


「お母さん、…どうしたの?」


わたしが体を揺すると、ハッとして我に返るお母さん。


「…あっ、ううん!なんでもないの!」


お母さんは助手席のドアを開けると、わたしに乗るようにと促す。


「お…お世話になりました。ではっ…」


そそくさと運転席に乗り込むと、すぐにエンジンをかけた。

わたしは、窓を開けて隼人に手を振りたかったけど、そんな余裕すらなく車は走り出した。
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