決して結ばれることのない、赤い糸
暗い山道。

一定間隔に設置された街頭がお母さんの顔を一瞬照らすけれど、その表情は…明らかに動揺していた。


「その…、『鷹さん』…だっけ?さっきの隼人くんの親戚の人…」

「うん。隼人の遠い親戚らしいけど」

「…そうなの?たしか…隼人くんの名字は『瀧』だったよね。親戚の人の名字は――


「たぶん…『水原』だったかな?中学のときに初めて会ったとき、鷹さんがそう言ってた気がする」

「そう…」


お母さんはそれだけつぶやくと、また黙り込んでしまった。

結局、家に着くまでの1時間近く、お母さんとの会話はなかった。



次の日。

予報通り、進路を変えた台風が直撃した。


大きな被害はなかったけど、とにかく雨風が強かった。

もちろん、わたしたちが乗って帰ろうとしていた電車は丸一日運休していた。
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