決して結ばれることのない、赤い糸
そして、廊下に散らばったノートを拾い集めていると――。


「手伝うよ」


落ちたノートに触れるゴツゴツとした大きな手が、わたしの視界に入った。


顔を上げると、そこにいたのはカズだった。


「…カズ!」

「かりん、なにやってんだよ。相変わらず、おっちょこちょいだな」


カズは最後の1冊を拾うと、わたしが抱えるノートの束の一番上に重ねた。


「職員室まで持って行くんだっけ?オレが行こうか?」

「けど、カズ…部活でしょ?」

「今は先輩たちが試合形式でグラウンド使ってるから、1年は休憩中なんだ。だから、飲み物を買いにきて」


カズはそう言って、近くの自販機で買ったと思われるスポーツドリンクを見せた。


「そっか。でも、たぶんもう落とさないから大丈夫っ。ありがとう」


両手が塞がって手を振れないかわりに、カズに微笑んで見せた。
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