決して結ばれることのない、赤い糸
「じゃあね」


そうして、カズに背中を向けた――そのとき。


「…やっぱり、オレじゃダメなのか!?」


人気のない廊下に響く、カズの声。

わたしは、思わずピタリと足を止めた。


「え…?」


振り返ると、カズがまっすぐにわたしを見つめていた。


「かりんが隼人のことを忘れられないように、オレだってかりんのことを忘れられない。…そばで支えてやりたいって思ってる!」


…カズ、まだそんなことを思ってくれていたんだ。


「かりんの気持ちの整理がついてからでいいから。だから、オレもいるってことを忘れないでほしい」

「カズ…」


カズの真剣なまなざしが、わたしを捉えて離さない。

吸い込まれるように目が行く。


…すると、ふと目の端に人影が映った。


おもむろに、そちらに視線を移すと――。
< 275 / 320 >

この作品をシェア

pagetop