爽やかくんの為せるワザ
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「な、成瀬さん……」
自分の席で次の授業の用意をしていた所に、佐賀くんが近付いてきた。
佐賀くんの手には、小さな紙袋があって。
すっとその紙袋を私に差し出してくる。
「え?」
「これ……母さんがこの前のお礼にって」
えっ。
お礼って……。
紙袋を受け取って佐賀くんを見上げると、佐賀くんは申し訳なさそうにこちらを見つめていた。
「……マドレーヌだって。母さん……昔は菓子職人だったんだ」
「えっ!?す、すごいね!」
「成瀬さん、この前は色々迷惑掛けてごめん……」
「いやいや、こちらこそお邪魔しちゃったのに頂いちゃって……!ほんとにありがとうっ」
佐賀くんのお家は芸術一家なんだろうか。
お母さんはパティシエールで、佐賀くんは美術の才能があって……。
すごいな。
マドレーヌ食べるの楽しみだなぁ。
「母さんが……ずっと成瀬さん可愛いって言ってて……」
「そうなの!?嬉しいなぁ……えへへ」
「……」
笑ってみせると、佐賀くんは少し照れたように俯いた。
前と比べて、こういう新鮮な表情がよく見れるようになった気がする。
暗い顔ばっかりじゃなくて、こう……魅力的というか。
良い事だよね。