爽やかくんの為せるワザ





   *   *   *



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「な、成瀬さん……」




自分の席で次の授業の用意をしていた所に、佐賀くんが近付いてきた。


佐賀くんの手には、小さな紙袋があって。

すっとその紙袋を私に差し出してくる。




「え?」


「これ……母さんがこの前のお礼にって」




えっ。

お礼って……。


紙袋を受け取って佐賀くんを見上げると、佐賀くんは申し訳なさそうにこちらを見つめていた。




「……マドレーヌだって。母さん……昔は菓子職人だったんだ」


「えっ!?す、すごいね!」


「成瀬さん、この前は色々迷惑掛けてごめん……」


「いやいや、こちらこそお邪魔しちゃったのに頂いちゃって……!ほんとにありがとうっ」




佐賀くんのお家は芸術一家なんだろうか。


お母さんはパティシエールで、佐賀くんは美術の才能があって……。

すごいな。


マドレーヌ食べるの楽しみだなぁ。




「母さんが……ずっと成瀬さん可愛いって言ってて……」


「そうなの!?嬉しいなぁ……えへへ」


「……」




笑ってみせると、佐賀くんは少し照れたように俯いた。


前と比べて、こういう新鮮な表情がよく見れるようになった気がする。

暗い顔ばっかりじゃなくて、こう……魅力的というか。


良い事だよね。



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