爽やかくんの為せるワザ



「え……成瀬さん……?」


「……あはは……」




笑って誤魔化そうと思ったけど、何も言い訳が思いつかなかった上に上手く笑顔が作れなかった。


……佐賀くんにも心配掛けて、こんな自分が情けなさ過ぎて更に泣けてくる。




「私……自分のことばっかりだなぁ……」




藍くんと付き合いだしてからは特にそう。


藍くんの優しさを無下にするようなことを考えたり、
周りを見ずにぼーっとして佐賀くんを怪我させたり。

藍くんの告白から逃げ出したことだってそうだ。


……自分の悪い所がどんどん露見してきてる。




「藍くんがね、私の『人の為に動ける』ところが好きって言ってくれてさ。それなのに私……全然人の為に動けてなくてさ……」


「……え」


「きっとこんな私を知ったら、藍くん幻滅しちゃうよね」




言葉では言わないかもしれないけど、

少なからず残念には思うはず。


私は……藍くんの好きな〝私〟になれてない。




「そんなことないよ……」



佐賀くんは押さえていたティッシュを捨てて、私とは目を合わせずにこちらに顔を向けた。

鼻血止まったのかな。




「羽水くんの言う通り、成瀬さんはちゃんと人の為に動けてるよ」


「……でも、現に佐賀くんに迷惑を――」





その瞬間。

力強く掴まれた肩が引き寄せられ、私は何も抵抗する暇もなく佐賀くんの腕に抱かれた。


つまり、抱き締められたのだ。



……え。


え?



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