冷たいキスなら許さない
「アンタさ、格好は地味だけど、よく見るとスタイルもいいし顔も綺麗だね。一緒にここから抜けない?いいことしようよ」

押さえ込まれて耳元でげはははと下品な笑い声を吐かれて内臓が縮みあがる。
何言ってんの、コイツ。

「やめてください。ちょっと。やめて」

震える声。さっきの西倉恭香の不意打ちにあってから冷静に物事が考えられない。
どうしよう、落ち着かないと。

利き腕をつかまれていてはひっぱたこうにも力が入らない。
ヒールで踏みつけるのと脛を蹴飛ばすのではどちらが効果的なんだろうか。
ぎゅっと目を閉じて冷静に考えないとと心を奮い立たせる。

「おい、お前、灯里に何してんだ」

いてててーーという男の声と同時に私の腕の拘束が解かれた。

つかまれた腕をさすりながら顔を上げると・・・・。
見知った顔があった。

「櫂」

櫂が男の腕をねじりあげていた。

「お前、彼女に何しようとしてた!」
櫂は鬼の形相で男を睨みつけている。男の方は呻きながら「離せよ」と繰り返す。
< 164 / 347 >

この作品をシェア

pagetop