冷たいキスなら許さない
「気にしないでって言ってももう遅いだろうけど。あの時も今もそう思ってるわけじゃないの。お互い余裕がなかった…そうでしょう?」

「それでも、やっぱり申し訳なかった。灯里にはきちんと謝りたかった。
アイツのピアスの件だって灯里と会う暇がないのにアイツとは会ってたって思わせてしまったんだしな」

私たちの間に暗く重い空気が流れる。

「櫂、あのね…」

「いい。灯里が何を言おうとしてるか、わかってるつもりだから。今はとりあえず食事しよう。美味いんだ、ここ」
櫂にピシャリと止められた。

わかってるのかどうかは別として、ちょうど注文した料理が運ばれてきたこともあり渋々私も頷いた。


「わ、これ面白いし美味しい」

卵白とイカのあんかけ炒飯。
食材が全部白。
ネギも使われているのは白い部分だけ、玉ねぎに卵白、イカ、ベースは鶏ガラスープ。

「普通の炒飯もうまいけど、これも変わっていていいだろ」
「うん、真っ白チャーハン。見た目はたんぱくな感じだけど、しっかり生姜とにんにくの味もするね。見た目よりがっつり味でくせになりそう」

櫂の言う通りここの料理はどれも美味しかった。

< 296 / 347 >

この作品をシェア

pagetop