千一夜物語-森羅万象、あなたに捧ぐ物語-
「雨竜!私を見なさい!」
突然声を上げた神羅に驚いた黎が強く腰を抱くと、神羅は腰を浮かして雨竜を強く見据えた。
「お主は私の卵を温めるのではなかったのですか?そのように真っ赤な目で殺気を撒き散らしている間は卵を温めることは叶いませんからね!」
荒い呼吸を繰り返して赤銅色の目を光らせていた雨竜がその目をぱちくりとさせた。
一瞬間違いなくきょとんとさせたことに成功すると、神羅は腹を摩ってわざとその腹を突き出して見せつけた。
「お主が兄となって私と黎の子を育てるのですよ。そうはしたくないというのですか?そんな気の持ちようでは到底私と黎の子の傍には居させられません!己を確と見据えなさい!」
叱咤激励を飛ばした神羅をしばしの間見つめていた雨竜は爆発的な成長のせいで己を制御することができず――それでも神羅を敵と認識しなかったのか、あらぬ方向に炎を吐いて暴れ回った。
「黎お願い、雨竜を殺さないで…」
「よし、じゃあ一発叩きのめして来よう」
天叢雲に行くぞ、と小さく声をかけた黎は、狼の背中から大きく跳躍して雨竜の頭に飛び乗った。
黎は大きく天叢雲を振りかぶると、にっこり。
「さあ、我に返ってもらうぞ」
そして力の限り鞘に収まったままの天叢雲を雨竜の脳天に一直線に叩きつけた。
声もなく雨竜が轟音を立てて倒れると、黎は華麗に着地して肩で天叢雲を叩きながら雨竜の目元でしゃがみこんだ。
「雨竜、起きろ」
――雨竜の目がゆっくり開いた。
赤銅色だった目は美しい金色の目に戻り、何度か瞬きして黎を認識すると、ぱかっと口を開いた。
「良夜…俺…」
「お前すごくかっこいいぞ。やばい、かっこいい」
何度もかっこいいと目を輝かせて繰り返す黎に神羅と天叢雲、ため息。
「手がつけられないわね」
周囲を呆れさせつつも、黎は完全に成体した雨竜を褒めちぎって喜びまくった。
突然声を上げた神羅に驚いた黎が強く腰を抱くと、神羅は腰を浮かして雨竜を強く見据えた。
「お主は私の卵を温めるのではなかったのですか?そのように真っ赤な目で殺気を撒き散らしている間は卵を温めることは叶いませんからね!」
荒い呼吸を繰り返して赤銅色の目を光らせていた雨竜がその目をぱちくりとさせた。
一瞬間違いなくきょとんとさせたことに成功すると、神羅は腹を摩ってわざとその腹を突き出して見せつけた。
「お主が兄となって私と黎の子を育てるのですよ。そうはしたくないというのですか?そんな気の持ちようでは到底私と黎の子の傍には居させられません!己を確と見据えなさい!」
叱咤激励を飛ばした神羅をしばしの間見つめていた雨竜は爆発的な成長のせいで己を制御することができず――それでも神羅を敵と認識しなかったのか、あらぬ方向に炎を吐いて暴れ回った。
「黎お願い、雨竜を殺さないで…」
「よし、じゃあ一発叩きのめして来よう」
天叢雲に行くぞ、と小さく声をかけた黎は、狼の背中から大きく跳躍して雨竜の頭に飛び乗った。
黎は大きく天叢雲を振りかぶると、にっこり。
「さあ、我に返ってもらうぞ」
そして力の限り鞘に収まったままの天叢雲を雨竜の脳天に一直線に叩きつけた。
声もなく雨竜が轟音を立てて倒れると、黎は華麗に着地して肩で天叢雲を叩きながら雨竜の目元でしゃがみこんだ。
「雨竜、起きろ」
――雨竜の目がゆっくり開いた。
赤銅色だった目は美しい金色の目に戻り、何度か瞬きして黎を認識すると、ぱかっと口を開いた。
「良夜…俺…」
「お前すごくかっこいいぞ。やばい、かっこいい」
何度もかっこいいと目を輝かせて繰り返す黎に神羅と天叢雲、ため息。
「手がつけられないわね」
周囲を呆れさせつつも、黎は完全に成体した雨竜を褒めちぎって喜びまくった。