ファンタジー探偵と学園祭
グリム先生の引き出しをためらいもなく開ける。きれいに整頓されている引き出しの中には何もないーーーように見えた。

並べられた文房具の下に、小さなバッチが隠されていることをアイリーンは見逃さなかった。

そのバッチはアイドルグッズを十点以上買うと記念にもらえるものだ。そのバッチに彫られた年号はーーー。

「アイリーンちゃん!!」

大声で名前を呼ばれたかと思ったら、いきなり後ろからアリスにアイリーンは抱きつかれた。ピーターパンが苦笑いをしながら二人を見ている。

「ありがとう!助けてくれて、本当にありがとう!」

泣きながらアリスはアイリーンに言った。アイリーンは微笑む。

「大丈夫です。あなたが無事でよかった」

アリスも怪我がなかったようだ。

泣き続けるアリスをアイリーンが抱きしめていると、ピーターパンがコロンをアイリーンに渡した。オレンジの香りのものだ。

「汗の匂いがする。これ付けた方がいいよ」

「ありがとうございます……」

アイリーンは少しコロンをつけた。



ボーガン事件のあと、学園に脅迫状が届いたことなどが一気に知れ渡ってしまった。

「すみません。こんなことになってしまって……」

アイリーンが頭を下げると、ペローは首を横に振った。

「あなたが頭を下げる必要はない…。気にせず調査を続けてください」

「はい」

アイリーンは真剣な表情でペローを見つめ、理事長室を後にした。



その二日後、また事件が起きた。

「たっ、大変だ!!」

ピーターパンが汗だくになって教室に飛び込んできた。

お昼休みだった教室は、違う意味で騒がしくなった。

「ピーター、どうしたの?」

「汗、すごいよ」

「コロン、今日忘れちゃったんじゃなかったっけ?」
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