しあわせ食堂の異世界ご飯2
「シャルル、制限時間はあとどのくらい!?」
「えっと、えと、あと二十分です!!」
「急がないと!!」
 さっきまでのシリアスな雰囲気はどこへやら。
 慌ててどうしようとパニックだ。けれど絶対に忘れてはいけないものが、ひとつある。先ほど見つけた、椎茸の王様だ。
 すぐにそれをシャルルに伝えると、ひどく驚いた。そしてダッシュでそれを狩って、アリアは無事に巨大な椎茸を手に入れる。
「こんなに大きな椎茸は、初めて見ました」
「私もです!」
 ローレンツが感心したように眺め、シャルルも同意する。
 今はしっかりアリアが持っているけれど、これを持ったうえで二十分以内に街へ戻るのは無理なのでは……と嫌な考えが脳裏をよぎる。
 もちろん、リベルトとローレンツに手伝ってもらうわけにはいかない。
「大丈夫ですよ、アリア様」
「シャルル?」
 騎士にお任せくださいと言うシャルルは、ロープを取り出して椎茸をアリアの体に結んでしっかり固定する。
「え?」
 そして、そのアリアをひょいっと担ぎ上げた。
「えええっ!?」
「私がアリア様を担いで走れば、制限時間に間に合います!」
「な、なるほど……!?」
 確かにシャルルは、細腕なのに猪を担いだりすることができる力持ちだ。痩せているアリアを持ち上げることなんて、朝飯前だろう。
 シャルルはリベルトとローレンツの方へ向き、頭を下げる。
「ありがとうございました。リベルト陛下に背中を押してもらわなければ、私はきっと騎士にならなかったと思います」
 何度お礼を伝えても足りないと、シャルルは言う。
 リベルトは気にするなと首を振り、それよりも早く行けと告げる。
「優勝しないと、アリアは私の妃になれないのだろう? シャルル、アリアの騎士なら――間違っても制限時間に間に合わないなんてことはないな?」
「もちろんです。お任せください、陛下!」
「行け」
 その言葉が合図となって、シャルルは一気に狭い山道を駆けだした。

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