水の踊り子と幸せのピエロ~不器用な彼の寵愛~
「ってことは……碧さんは皇族ってことですか?」
「そうなるわ。正当な血筋ではないけれどね」
「私、すごい人に助けてもらったんですね……」
皇族である碧がなぜ、曲芸団の団長をやっているのかは甚《はなは》だ疑問だ。それは置いておくとして。
彼は皇族であることを誇示したり、記憶が無いことを悲観したりしないらしい。滉や渚が、皇族の碧に対して慇懃《いんぎん》な態度をとらないのは、それが理由だろう。
(もしかして、碧さんも別の世界からやってきた、とか……?)
遊泳禁止の海で溺れた波音は、客観的に見れば自業自得だったはずなのだ。それをわざわざ助けてくれた碧は、あの海岸や自分の過去に、何らかの思い入れがあったのかもしれない。
「はい、検査終わり。目立った外傷はないし、意識もはっきりしてる。特に問題ないわ。酸素が不足していた分、身体に力が入らないみたいだから、今日はしっかり休んでおきなさい」
「分かりました。ありがとうございました」
波音は渚に背中を支えてもらい、上半身を起こした。直後、何かを言いたげに、渚が咳払いをする。
「そういえば、あんた。私のこと、何も変に思わないの?」
「え? 何がですか?」
「……ほら。口調とかで……分かるでしょ」
「ああ。碧さんが好きってことですか?」
躊躇《ちゅうちょ》なく、波音は言った。渚の態度を見ていれば分かるからだ。
一方で、渚は目と口を大きく開き、白い頬を真っ赤に染めた。その反応は、まさに乙女そのものだ。
「そうなるわ。正当な血筋ではないけれどね」
「私、すごい人に助けてもらったんですね……」
皇族である碧がなぜ、曲芸団の団長をやっているのかは甚《はなは》だ疑問だ。それは置いておくとして。
彼は皇族であることを誇示したり、記憶が無いことを悲観したりしないらしい。滉や渚が、皇族の碧に対して慇懃《いんぎん》な態度をとらないのは、それが理由だろう。
(もしかして、碧さんも別の世界からやってきた、とか……?)
遊泳禁止の海で溺れた波音は、客観的に見れば自業自得だったはずなのだ。それをわざわざ助けてくれた碧は、あの海岸や自分の過去に、何らかの思い入れがあったのかもしれない。
「はい、検査終わり。目立った外傷はないし、意識もはっきりしてる。特に問題ないわ。酸素が不足していた分、身体に力が入らないみたいだから、今日はしっかり休んでおきなさい」
「分かりました。ありがとうございました」
波音は渚に背中を支えてもらい、上半身を起こした。直後、何かを言いたげに、渚が咳払いをする。
「そういえば、あんた。私のこと、何も変に思わないの?」
「え? 何がですか?」
「……ほら。口調とかで……分かるでしょ」
「ああ。碧さんが好きってことですか?」
躊躇《ちゅうちょ》なく、波音は言った。渚の態度を見ていれば分かるからだ。
一方で、渚は目と口を大きく開き、白い頬を真っ赤に染めた。その反応は、まさに乙女そのものだ。