水の踊り子と幸せのピエロ~不器用な彼の寵愛~
「波音はいつから働けそうなの?」
「身体は問題なさそうなので、私は明日からでも……。えっと、碧さん、どうでしょうか?」
「お前がそれでいいなら、任せる」
「分かりました。じゃあ、渚さんも、明日からまたよろしくお願いします」
「分かったわ。それにしても、波音って身体が丈夫よね。体力の回復も早いし……何か運動でもやってたの?」
さすがの観察眼だ。多くの患者を診てきた渚には、分かるのだろう。溺れたところを助けられておいて、水泳をやっていたと自慢げには言えないが、波音は頷いた。
「元の世界では、水泳を教える仕事をしていました。小さい時から水泳と、日舞……舞踊とか、ダンスを習っていたので、身体を動かすのは好きです」
「え、そうなの? それで……」
「それで溺れるとは、本末転倒だな。教えた相手も溺れていなきゃいいが」
渚だけではなく、碧にまで突っ込みを食らい、波音は苦い笑いを浮かべた。目の前の二人は、にやにやしながら顔を見合わせている。
「あの時は、離岸流に巻き込まれて……仕方がなかったんです」
「分かってるわよ。『河童の川流れ』って言葉があるものね。碧だって、ごく稀にだけど、手品中に失敗することもあるし」
「えっ、そうなんですか?」
「おい、渚。そういうのはこいつの前で言うな」
波音を散々笑ったくせに、碧にも失敗談があるのだ。手の届かない王子様が、急に普通の人間になったように感じて、今度は渚と波音が笑う番だった。
「身体は問題なさそうなので、私は明日からでも……。えっと、碧さん、どうでしょうか?」
「お前がそれでいいなら、任せる」
「分かりました。じゃあ、渚さんも、明日からまたよろしくお願いします」
「分かったわ。それにしても、波音って身体が丈夫よね。体力の回復も早いし……何か運動でもやってたの?」
さすがの観察眼だ。多くの患者を診てきた渚には、分かるのだろう。溺れたところを助けられておいて、水泳をやっていたと自慢げには言えないが、波音は頷いた。
「元の世界では、水泳を教える仕事をしていました。小さい時から水泳と、日舞……舞踊とか、ダンスを習っていたので、身体を動かすのは好きです」
「え、そうなの? それで……」
「それで溺れるとは、本末転倒だな。教えた相手も溺れていなきゃいいが」
渚だけではなく、碧にまで突っ込みを食らい、波音は苦い笑いを浮かべた。目の前の二人は、にやにやしながら顔を見合わせている。
「あの時は、離岸流に巻き込まれて……仕方がなかったんです」
「分かってるわよ。『河童の川流れ』って言葉があるものね。碧だって、ごく稀にだけど、手品中に失敗することもあるし」
「えっ、そうなんですか?」
「おい、渚。そういうのはこいつの前で言うな」
波音を散々笑ったくせに、碧にも失敗談があるのだ。手の届かない王子様が、急に普通の人間になったように感じて、今度は渚と波音が笑う番だった。