水の踊り子と幸せのピエロ~不器用な彼の寵愛~
「波音。碧は、さ……」
「はい」
「私の気持ちに気付いてるっぽい?」
「……へっ?」
予想が外れ、波音はがくりと姿勢を崩してしまった。しかしすぐに背筋を伸ばし、真剣な表情で聞いてくる渚に向き合う。
確証はないが、碧はあれでいて、人の心の機微《きび》には聡《さと》い。渚の気持ちにも、間違いなく気付いているだろう。
(私が碧兄ちゃんを好きでいることも、一瞬で見抜いたし……というか)
渚の碧に対する好意は、出会ったばかりの波音でもはっきりと分かるほどだ。それが碧に伝わっていない可能性は、限りなく低い。波音は再度ごくりと喉を鳴らし、頷いた。
「ほぼ確実に、気付いていると思います」
「ああ、やっぱり……! 今まで誰にも相談できなくてもやもやしていたの。波音が来てくれて助かったわ。昨夜、碧は私のこと、何か話してた?」
「え? えーっと……」
思い起こしてみても、渚のことについて語り合った記憶はない。波音は誤魔化すように首を傾げた。
「この世界に来て、混乱していたのもあるので、実は……あまり覚えていません」
「そ、そうよね。どうしよう。気付かれているなら、そろそろはっきりと告白すべきかしら……」
胸を押さえて頬を赤くする渚を見て、波音の心臓がきりりと痛む。渚は波音のことを信じてくれている。だから、『あのこと』は絶対に話せない。
いっそのこと、渚に激しく嫉妬してもらえれば、気が楽だったかもしれない。
「はい」
「私の気持ちに気付いてるっぽい?」
「……へっ?」
予想が外れ、波音はがくりと姿勢を崩してしまった。しかしすぐに背筋を伸ばし、真剣な表情で聞いてくる渚に向き合う。
確証はないが、碧はあれでいて、人の心の機微《きび》には聡《さと》い。渚の気持ちにも、間違いなく気付いているだろう。
(私が碧兄ちゃんを好きでいることも、一瞬で見抜いたし……というか)
渚の碧に対する好意は、出会ったばかりの波音でもはっきりと分かるほどだ。それが碧に伝わっていない可能性は、限りなく低い。波音は再度ごくりと喉を鳴らし、頷いた。
「ほぼ確実に、気付いていると思います」
「ああ、やっぱり……! 今まで誰にも相談できなくてもやもやしていたの。波音が来てくれて助かったわ。昨夜、碧は私のこと、何か話してた?」
「え? えーっと……」
思い起こしてみても、渚のことについて語り合った記憶はない。波音は誤魔化すように首を傾げた。
「この世界に来て、混乱していたのもあるので、実は……あまり覚えていません」
「そ、そうよね。どうしよう。気付かれているなら、そろそろはっきりと告白すべきかしら……」
胸を押さえて頬を赤くする渚を見て、波音の心臓がきりりと痛む。渚は波音のことを信じてくれている。だから、『あのこと』は絶対に話せない。
いっそのこと、渚に激しく嫉妬してもらえれば、気が楽だったかもしれない。