水の踊り子と幸せのピエロ~不器用な彼の寵愛~
渚は九年前に碧に出会って一目惚れして以来、ずっと傍で見守り、彼に協力しているのだそうだ。
幼い頃から医者を志していたことから、結果的に曲芸団の常駐医師となり、その手助けとなったという。
また、舞台演出の勉強をするため、碧と一緒に他国の曲芸団を見学しに行ったことなども、楽しそうに話してくれた。
「碧はね、公演を楽しむお客さんたちから『幸せのピエロ』って言われてるの」
「幸せのピエロ?」
「公演を見てから、仕事がうまくいくようになったり、金運がよくなったり、好きな人への告白が成功したりとか。そういう小さな幸運を運んでくれるっていう噂が流れて、一躍有名になったわ。碧の演じるピエロは、見ていて元気をもらえるの」
波音は、手の届かない王子様が、また更に遠くなったように感じた。それほど、たくさんの人を既に幸せにしているというのに、碧はまだ足りないと言いたげに、前に突き進んでいる。
日々の穏やかな仕事に満足していた波音には、想像もできない世界だった。
スパイスで味付けされた鶏肉を囓り、飲み込んでから、波音はあと一つだけ聞きたいことを思い出した。副団長の滉のことだ。
あれから、話し掛けようにもとりつく島がなく、波音は困り果てている。
幼い頃から医者を志していたことから、結果的に曲芸団の常駐医師となり、その手助けとなったという。
また、舞台演出の勉強をするため、碧と一緒に他国の曲芸団を見学しに行ったことなども、楽しそうに話してくれた。
「碧はね、公演を楽しむお客さんたちから『幸せのピエロ』って言われてるの」
「幸せのピエロ?」
「公演を見てから、仕事がうまくいくようになったり、金運がよくなったり、好きな人への告白が成功したりとか。そういう小さな幸運を運んでくれるっていう噂が流れて、一躍有名になったわ。碧の演じるピエロは、見ていて元気をもらえるの」
波音は、手の届かない王子様が、また更に遠くなったように感じた。それほど、たくさんの人を既に幸せにしているというのに、碧はまだ足りないと言いたげに、前に突き進んでいる。
日々の穏やかな仕事に満足していた波音には、想像もできない世界だった。
スパイスで味付けされた鶏肉を囓り、飲み込んでから、波音はあと一つだけ聞きたいことを思い出した。副団長の滉のことだ。
あれから、話し掛けようにもとりつく島がなく、波音は困り果てている。