水の踊り子と幸せのピエロ~不器用な彼の寵愛~
それは、波音が中学二年生の時の夏だ。当時高校三年生だった碧は、予備校からの帰り、交通事故に遭った。赤信号の横断歩道を渡っていた老夫《ろうふ》を助けようと、咄嗟に飛び出したのだ。
目撃者が多数いたことで、真相はすぐに判明し、当時の碧の行動は世間から賞賛されつつも、嘆かれた。老夫は、碧の命懸けの行動により一命を取り留めた。
訃報を聞いた当時の衝撃を、波音は今でもはっきり覚えている。数週間に渡って立ち直れず、魂が抜けてしまったように落ち込み、学校に行けない日々が続いた。
それは大和も同じだった。大切な弟を亡くし、その喪失感を埋めようと、波音の元にやってきたこともある。二人で碧の思い出を語り尽くし、一緒になって子どものようにわんわんと泣いた。
(もうすぐ、碧兄ちゃんの命日だな……)
スポーツジム主催の海合宿イベントが終われば、碧の命日がやってくる。今年も、大和と共に墓参りに行くことになりそうだ。
「姫野先生は、同じ職場の先生のこと、気になったりとかしないんですか?」
「ああ……はい。私には、他に好きな人がいるので」
「えっ! そうなんですか? どんな人ですか?」
「優しくて、朗らかで。私が困っていたら、いつも助けてくれる人です」
「いいなぁ……」
言っていることに嘘はないが、その片想いは永遠に叶わない。ドキドキの青春時代を全て碧に捧げたようなもので、その存在を失ってから、波音は新たな恋ができないでいた。
もう二十四歳にもなったというのに、ずるずると初恋を引きずって。
目撃者が多数いたことで、真相はすぐに判明し、当時の碧の行動は世間から賞賛されつつも、嘆かれた。老夫は、碧の命懸けの行動により一命を取り留めた。
訃報を聞いた当時の衝撃を、波音は今でもはっきり覚えている。数週間に渡って立ち直れず、魂が抜けてしまったように落ち込み、学校に行けない日々が続いた。
それは大和も同じだった。大切な弟を亡くし、その喪失感を埋めようと、波音の元にやってきたこともある。二人で碧の思い出を語り尽くし、一緒になって子どものようにわんわんと泣いた。
(もうすぐ、碧兄ちゃんの命日だな……)
スポーツジム主催の海合宿イベントが終われば、碧の命日がやってくる。今年も、大和と共に墓参りに行くことになりそうだ。
「姫野先生は、同じ職場の先生のこと、気になったりとかしないんですか?」
「ああ……はい。私には、他に好きな人がいるので」
「えっ! そうなんですか? どんな人ですか?」
「優しくて、朗らかで。私が困っていたら、いつも助けてくれる人です」
「いいなぁ……」
言っていることに嘘はないが、その片想いは永遠に叶わない。ドキドキの青春時代を全て碧に捧げたようなもので、その存在を失ってから、波音は新たな恋ができないでいた。
もう二十四歳にもなったというのに、ずるずると初恋を引きずって。