水の踊り子と幸せのピエロ~不器用な彼の寵愛~
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 海合宿イベント当日。

 世間は夏休み真っ只中ということで、二泊三日のスケジュールにも関わらず、多くの参加者が集まった。ジムの総合イベントなので、水泳コースを選択していない生徒も参加している。

 よって、合宿と銘打《めいう》ってはいるものの、練習メニューはほとんどない。生徒同士の交流とレクリエーションを、主な目的としているからだ。

「一日のスケジュールはお配りした資料の通りです。随時、安全確認のために集合してもらうことになりますが、怪我や事故に気を付けて、思い切り楽しんでください。まだ泳ぎが苦手な人は、決して無理をしないように」
「はーい」
「では、解散です」

 各インストラクターからの説明が終わり、生徒たちが思い思いの方へと散っていく。波音の担当する女性たちは、普段の競泳用水着ではなく、各々が気合いの入ったファッション水着を準備していた。

 波音も、いつもとは違って花柄のビキニにしたのだが、海水浴場でそれを皆に見せるのが恥ずかしく、上からジャージを着用して隠している。

「姫野先生」
「はい! あ……深水先生」

 しばらくの間、生徒たちのはしゃぐ様子をパラソルの下で微笑ましく見ていたら、大和が話しかけてきた。職場では、便宜上、敬称をつけて互いに呼んでいる。二人の関係を周囲に知られると、後々面倒だからだ。
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