水の踊り子と幸せのピエロ~不器用な彼の寵愛~
しかし、その姿をまじまじと見て、波音は唖然とした。
頭にはとんがり帽子を被り、赤・青・黄のおもちゃカラーで彩られた、ぶかぶかで奇抜な衣装と、白塗りの顔に赤い鼻と唇。目の周りは黒く塗られ、その下に青色の涙マークが描かれている。
「あ、あれが碧さん……なの?」
全くの別人。確かにそれでこそピエロなのだが、いつもの碧の姿はどこかに行ってしまったようだ。
ピエロは、テーマパークにいる着ぐるみのキャラクターのように、両手を大きく振って会場を沸かせた。
「わー!」
「団長ー!」
「いつものやってー!」
子どもたちの声があちこちで響く。碧は言葉を発することなく動きで返事をし、自分が飛び出してきた箱を叩いた。すると、箱の壁が四方に開いて、中から玉乗り用の球体が現れる。
碧はそれに飛び乗ると、おどけたように足を動かし、ステージ上を縦横無尽に走り回った。それは恒例の演出なのか、子どもたちから歓声が上がる。
それから、玉の上でジャンプしたり、片手で逆立ちしたり、ジャグリングをしたりと、碧はピエロならではの技を披露していく。
しまいには、とんがり帽子の中から十数羽の鳩が出てきて、綱渡り用の高台へと飛んでいった。ピエロが地味だなんて思った自分を殴りたい、と波音は思う。
「す、ごい……」
波音が本番を見たら腰を抜かすかもしれないと、碧は言っていた。渚から、碧がこの曲芸団に掛ける想いや願いを聞いたからこそ、心が激しく揺さぶられる。波音は感動していた。
頭にはとんがり帽子を被り、赤・青・黄のおもちゃカラーで彩られた、ぶかぶかで奇抜な衣装と、白塗りの顔に赤い鼻と唇。目の周りは黒く塗られ、その下に青色の涙マークが描かれている。
「あ、あれが碧さん……なの?」
全くの別人。確かにそれでこそピエロなのだが、いつもの碧の姿はどこかに行ってしまったようだ。
ピエロは、テーマパークにいる着ぐるみのキャラクターのように、両手を大きく振って会場を沸かせた。
「わー!」
「団長ー!」
「いつものやってー!」
子どもたちの声があちこちで響く。碧は言葉を発することなく動きで返事をし、自分が飛び出してきた箱を叩いた。すると、箱の壁が四方に開いて、中から玉乗り用の球体が現れる。
碧はそれに飛び乗ると、おどけたように足を動かし、ステージ上を縦横無尽に走り回った。それは恒例の演出なのか、子どもたちから歓声が上がる。
それから、玉の上でジャンプしたり、片手で逆立ちしたり、ジャグリングをしたりと、碧はピエロならではの技を披露していく。
しまいには、とんがり帽子の中から十数羽の鳩が出てきて、綱渡り用の高台へと飛んでいった。ピエロが地味だなんて思った自分を殴りたい、と波音は思う。
「す、ごい……」
波音が本番を見たら腰を抜かすかもしれないと、碧は言っていた。渚から、碧がこの曲芸団に掛ける想いや願いを聞いたからこそ、心が激しく揺さぶられる。波音は感動していた。