水の踊り子と幸せのピエロ~不器用な彼の寵愛~
「……こっちを見るな」
「どうして赤くなってるんですか?」
「うるさい。今、自制しているんだから近付くな」
「……変な想像でもしたんですか?」
たまには自分が優勢になりたいものだ。波音はいい気になって、いつもの仕返しだとでも言いたげに質問攻めにした。碧が困ってしまえばいいと思ったからだ。
「調子に乗りやがって。近付くなって言ったろ。俺が想像したことをやってもいいのか」
「それはだめです! すみません……!」
手刀が降ってきそうになって、波音は身構えつつ謝った。碧も本気でするつもりはなかったらしく、振り上げた手をそのまま引っ込める。数秒経って、互いに吹き出した。
「お前、強《したた》かになってきたな」
「そうですか? 碧さんは、雰囲気が柔らかくなりましたよ」
「はあ? 気のせいだろ」
「教え方は乱暴だし、スパルタですけど……本当はすごく優しい人だって、ピエロを見ていて確信しました」
「……あれは演技だ」
全くもって、碧は素直ではない。褒めそやされることには慣れているはずなのに、波音に少しおだてられただけで、照れてそっぽを向いた。
ようやく見えてきた、碧の人間としての本質。波音は含み笑いをした。
「どうして赤くなってるんですか?」
「うるさい。今、自制しているんだから近付くな」
「……変な想像でもしたんですか?」
たまには自分が優勢になりたいものだ。波音はいい気になって、いつもの仕返しだとでも言いたげに質問攻めにした。碧が困ってしまえばいいと思ったからだ。
「調子に乗りやがって。近付くなって言ったろ。俺が想像したことをやってもいいのか」
「それはだめです! すみません……!」
手刀が降ってきそうになって、波音は身構えつつ謝った。碧も本気でするつもりはなかったらしく、振り上げた手をそのまま引っ込める。数秒経って、互いに吹き出した。
「お前、強《したた》かになってきたな」
「そうですか? 碧さんは、雰囲気が柔らかくなりましたよ」
「はあ? 気のせいだろ」
「教え方は乱暴だし、スパルタですけど……本当はすごく優しい人だって、ピエロを見ていて確信しました」
「……あれは演技だ」
全くもって、碧は素直ではない。褒めそやされることには慣れているはずなのに、波音に少しおだてられただけで、照れてそっぽを向いた。
ようやく見えてきた、碧の人間としての本質。波音は含み笑いをした。