水の踊り子と幸せのピエロ~不器用な彼の寵愛~
「その『碧』と俺は、似ているところでもあるのか?」

 魂が同じ人間ではないかと疑っているのだから、似たところがあって当然のように思える。碧は、焦れたようにそう聞いてきた。

「……全然、似てないです。性格なら、むしろ正反対。顔も違いますし」
「はあ? それで、俺とそいつが繋がっていると思うのか?」
「強いて言えば、困っている人を放っておけない、お人好しで優しいところです」
「俺は別に、そんなんじゃ……」
「優しいですよ、碧さんは。見ず知らずの私を、こうして拾って面倒見てくださっているんですから。そこは、碧兄ちゃんとそっくり」

 波音は、まだ幼かったあの日、『碧兄ちゃん』に声を掛けられたことを思い出した。

『君、一人?』
『波音っていうんだ。本当に波の音が聞こえてきそうな名前だね』
『僕たちと一緒に遊ぶ? 兄貴もいるけど』
『ほら、あっちのお友達のところ、行っておいで。自分から、一緒に遊んでって言うんだ』

 もしもまた碧兄ちゃんに会えるのなら、あの時の感謝を伝えたい。だから、目の前の碧がそうであってくれたらと、願う気持ちがあった。

「随分、幸せそうな顔をするんだな」
「え? あ、はい。やっぱり、好きだなあって思って」
「それは俺じゃなくて、死んでしまった碧の方だろ?」
「……そう、ですが。きゃっ」

 不意に、碧の腕が波音の腰に伸びてきて、密着するように抱き寄せた。腕と腕、波音の頭と碧の頬が触れ合う。
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