クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした



翌日、私たちは朝から郊外の駅で待ち合わせた。
私と千石くんは、今日一日恋人として過ごす。これが最初で最後の一日だ。

物理的に別れが近いのかもしれない。そんなことを考える。
お父様の社長から総務を出て自分の補佐につけなんて言われているのかもしれない。総務から出れば、会社の後継者と一社員。会うことはなくなる。
千石くんは自分の立場を思いだしたのだろう。この会社の後継者である自覚から、一時の気の迷いを反省し、区切りをつけることにした……私の想像する千石くんの気持ち。
わからないけれどね、本当のところは。

ところで、都内より何度か気温が低いこの駅で待ち合わせたのはなんでだろう。下りの電車が到着するたび、若者やファミリー層が降りてくる。たぶん行き先は同じだ。私たちの目的地もそこだろうか。

今日はデートということだったけど、私は腰にサッシュベルトのついたワイドパンツにぺったんこヒールのパンプス。あったかいウールのジャケットというスタイルだ。あまり気張ってガーリーにするのはやめた。

「真純さん、すみません!」

1、2分遅れて千石くんが到着した。彼も今日はジーンズにショート丈のダウンジャケットだ。髪の毛もラフで、東京タワーで出会った若い青年そのものの姿をしている。
そして、表情は昨日より幾分明るい。私を見て、ふわっと表情を綻ばせた。

「真純さん、そういう格好も可愛いですね」
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