クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
「千石くんも、大学生みたいよ」
「前のデート、張り切ってカッコつけて、結局、真純さんの受けが悪かったので」

その言葉にぶふっと吹き出してしまった。前のホテルディナーは彼なりに頑張っていたのだ。私に気に入ってもらおうと……そのいじらしさが微笑ましく思えてしまった。
千石くんは頰を赤らめて、怒ったような顔をする。

「今日は素できました。せっかく真純さんが付き合ってくれるんだし」
「うん、そういう千石くんもかっこいいよ。ほら、通り過ぎる女の子たち、みんなきみを見てる。千石くんはかっこいいんだよ」

まるで姉か母親みたいな気分で褒めると、余計千石くんは赤くなる。

「ところで、今日行くところってここ?」

私は駅に出ている看板を指差す。
アクティビティフォレストというレジャー施設の看板だ。この駅に降りるのは地元の人がそこへ向かう観光客ばかりなんだもの。

「はい!そうです」
「もー、先に言ってよ。ジーンズできたわよ、それなら」
「アクティビティやる気満々じゃないですか」

このレジャー施設は子どもから大人まで楽しめるアクティビティが詰まった遊園地だ。もちろん、普通の観覧車やジェットコースターなんかもあるらしい。行ったことがないから聞いた話だけどね。

「そのパンツと靴で大丈夫だと思いますよ。何年か前、涼次郎と来たんです」
「今日、涼次郎くんも誘えばよかったね」
「それじゃ、デートにならないじゃないですか」
「横手さんも誘ってさ」
「だから、デートにならないでしょ」

デートになんかしたくないんだもの。おしまいがくるデートなんか。
なんて、子どもの我儘みたいなこと言わないけれど。

ああ、デートが始まってしまう。私と彼の、最初で最後の恋人の時間が。
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