クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
夕方のスイーツビュッフェは混んでいた。少し早い夕飯の子たちもいるのかもしれない。私と千石くんにとってもそうなりそうだ。

「お皿山盛りにするのが流儀なんですかね」

どの女子も山盛りにスイーツを持っているのを見て、千石くんがはーと感嘆のため息。たしかに壮観って感じだよね。キラキラ可愛い女の子たちが量だけなら男子顔負けのスイーツを頬張る姿は。

「そうね。流儀流儀。孝太郎も山盛りにするのよ」
「そんなに入るかな」
「ほら、パスタやお肉のソテーもあるからそのへんもつまめば入るよ。甘いのしょっぱいの交互にいきなよ」
「真純さん、俺を太らせたいんですか?」

千石くんの苦笑いについ意地悪な気持ちになる。それはちょっと寂しい意地悪だ。

「太っていいよ。太ったら、他の女の子にモテなくなるでしょ?」

え、と千石くんが唇を疑問の形に歪める。

「どこに行っても女子の注目の的なんだもん、孝太郎は。会社でも、デートしてても。でも、太ったら私だけのものになるかなぁって」

恋人ごっこなんだからこのくらい言ったっていい。リップサービスだ。
だけど、言ったそばから私は後悔した。
この日限りのごっこ遊びには痛々しすぎる言葉だった。

「そんなこと考えてたの?」

対する千石くんは、いたずらっぽい笑顔だ。ああ、彼の方が大人だ。彼はちゃんと私の意地悪な遊びに乗ってくれている。

「他にどれだけ女の子に好かれようが、俺が好きなのは真純さんだけ」

惚れ惚れするくらい美しく笑って、千石くんは答えた。
自分で仕掛けた意地悪に、私の方が苦痛を感じている。
ああ、痛い。
楽しくて幸せで、そして心臓がぎゅうぎゅうに絞られるみたいに痛い。


< 136 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop