クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
なんだろう。今日は荷物が届く予定はない。単身者の多いマンションだ。回覧板のようなものも回ってこない。
そっと近づき、ドアスコープから外を見た。

「え……」

そこには千石くんがいた。今日、オフィスで見たスーツ姿のまま、立っている。
野々花の旦那さんの件で、送ってもらったことがあるから、彼は私の家を知っている。だけど、尋ねてくる理由なんかないはずなのに。

「何か用ですか?」

私はドアに向かって言った。インターホンがないから、こうして話すしかない。

「真純さん、少し、お時間をいただけますか?」
「悪いけれど、今日はもう……」
「一・二分でいいんです」

ルームウェア姿であることに抵抗はあった。しかし、もっと恥ずかしい姿は一度見せているし、ここで過剰反応をしたくなかった。

鍵をはずし、ドアを開ける。
千石くんが三和土に入ってくる。

「なに?」
「真純さん……俺……」

千石くんは躊躇いがちに視線を泳がせる。珍しいことに言い淀んでいる様子だ。
苛立ちなのかなんなのかわからない。無性に意地悪な気持ちになり、私は口の端をあげた。

「結婚するんでしょう?それなのにこんなところに来ちゃ駄目じゃない」

キッと千石くんが私を見据える。睨むような視線にたじろがないで見つめ返した。

「真純さんは……俺が結婚してしまっても、……いいですか?」
「そんなことを聞きに、わざわざ来たの?」
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