クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
呆れた表情を作って、私は腕を組んだ。

「結婚でもなんでも好きにすればいいわ。私に関係のあることじゃないもの」
「よく言う」

千石くんの瞳がきらりと閃く。あの野性的な色だ。パワーが強くて、圧倒される。呑まれたくない。

「俺のことが好きで好きでしょうがないくせに」
「好きじゃない」

私は憎々しく答えた。この期に及んで何を言いだすのだろう。私は最初から、千石くんのことなんか好きじゃない。

東京タワーで出会って、オフィスで再会して、助けてもらって優しくしてもらって、たくさんの好意をもらった。

だけど、私はあなたより年上で、あなたとは住む世界が違って、あなたみたいにモテる男の何番手かにはなりたくなくて……。

そして、その全部があなたを『好き』になる気持ちを止めてくれなかった……。

「お姉さん、泣きそうな顔してる」

千石くんがあの日の言葉をなぞって言った。いつの間にか流れていた私の頬の涙を拭う。
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