キミへの想いは、この声で。

「あっ、佐藤さん。おはよう」


教室前の廊下を歩いていると、前方からやってきた川島くんに元気よく挨拶された。


まだ早朝だからか、渡り廊下にその声が響く。


「……」


だけど私は当然のことながら、返事はしない。


みんなが当たり前のようにする「おはよう」の挨拶すらも私にはできないから。


そのまま素通りして、教室に上がりこもうとすると、彼に手首を掴まれた。


驚いて顔をあげると、彼は我に返ったのか、恥ずかしそうにパッとその手を解放した。


「あ、いや……、ハンカチ落としてたから、それ……言いたくて」


そう言われ、慌てて自分の足元を見る。


だけど、ハンカチらしきものは見当たらなくて目で探しまわっていると、頭上から「はい」という声が聞こえてきた。

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