覚悟はいいですか

浴室から出た私は、今ソファ前のラグに座り込み、同じくお風呂上りの礼にタオルで頭を拭かれていた
もちろん自分でやるって言ったんだけどね……

「紫織はお腹すかない?何か取ろうか?」

後ろのソファに座ったまま、礼が聞いてくる
そう言えばパーティーではほとんど食べてないし、もう夕飯の時間だ

「あ、少しすいたかも…」

「じゃあピザでもとろうか。他に何か食べたいのある?」

「ううん、ビザがいい」

「了解」

礼はタオルを持ってソファから立つと、コンシェルジュを呼び出しピザを頼んだ
それから洗面所に一旦消え、今度はドライヤーを持ってまた私の後ろに座る

礼の長い脚の間で座ったまま、ドライヤーで髪を乾かしてもらう
何か子どもになったみたいですごく恥ずかしいーーーのは私だけで、礼はさも当然のようにして顔色ひとつ変えない
いや、ちょっと嬉しそう?

「あ、自分で…」「いいから」

一応言ってみたが、やっぱり断られた
さっきまで怯えていた私を気遣い、徹底して甘やかすつもりみたいだ

いつもの私なら固持するところだが、今日はいろいろショックが大きくて自分じゃないみたいに弱気になってるのが分かる

落ち込んだりショックなことがあっても、普段なら自宅で凝った料理を作り、好きなDVDを見て浮上するまで他人には会わないが、今は一人になるのが恐い。
かと言って誰かとおしゃべりして、興味本意に根掘り葉掘り聞かれるのも、こんこんと説教されるのも嫌だ
何もしたくない、ただ誰かに側にいてほしい……
こんなめんどくさい状態、礼は何も聞かないけどわかってくれてるように感じて、私は今、とても穏やかな気持ちで彼に世話をやかれているーーー

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