覚悟はいいですか
ピザと礼が作ったサラダ、インスタントのコーンスープでお腹もいっぱいになると寝るように言われ少し驚いた

「まだ8時前だよ」

「うん、でも今の紫織には休息が必要だから。今日は無理しないで寝た方がいいよ。
…話は明日聞く」

「明日?仕事は?」

「あるけど家を出るのは夕方からでいい。それまではここでもできるし。紫織は休みもらったんだろ」

夕ご飯前にスマホをチェックしようと手に取ると、用心のためだからと言われ礼と一緒に見た。だから麗奈からメールがあり、明日は今日の振り替えで代休扱いになったことは彼も知っている

私が頷くと、

「じゃ、時間はたっぷりある。俺には紫織の体と心の健康が優先事項、だからね?」

確かにここ数ヶ月、ろくに休日もなかった。その上今日の出来事があって、何もかも寝て忘れたいのはやまやまだけど、礼に話を聞いてほしい気持ちもある

というか、今でないと彼にこの話は出来ないのではないか?

こんな風に子どもの様に甘やかされるのが心地いいなんて、普段の私なら決して思わないだろう
でも今は、素直に昔のことを話せる気がする

私を立たせようと腕に掛けられた礼の手を握って引き留めた

「礼、話を聞いて。あなたに今、聞いてほしいの」

礼はちょっと驚いてから、じっと見つめる
私も覚悟を伝えるように、私自身も覚悟が揺らがないように、真剣に礼を見つめ返す

どうかきちんと最後まで話せますように!
途中パニックを起こしませんように!

話す内容を思えば、微かに手が震え出す
止まれと念じながら必死に押さえていると、あたたかい大きな手に手が包まれる
見上げた先には、安心させるように優しい微笑みを浮かべた人がいる

「わかった」

そう言ってもう一度力強く、手を握ってくれた
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