覚悟はいいですか
車中はいつも通り、仕事での出来事やジョルジュさんのモテっぷりを話し、礼が相槌を打つ
でもマンションに着いた時、明るい照明の下で初めて、礼の表情が固いことに気づいた
玄関のドアが閉まる前に、腕を引かれて抱き締められ、驚く間もなく唇が重なる
私は目を見開いたまま、なにがあったのか、礼の震える睫毛に隠された瞳を窺う
口中を貪るように舌が舐めまわし、礼の大きな手が身体中をまさぐる
初めて体を重ねたあの日から1週間、毎晩のように愛し合ってきたが、こんなに強引で性急に求められたことはない
いつも慣れない私を気遣い、準備を整えて優しく扱ってくれる彼の突然の変わり様に何故か心配になった
急激に高まる官能の波に流されそうになるのを懸命に堪え、力が抜けていく体を礼の背に腕を回して支える
耳元に口を寄せ、そっと聞いてみた
「礼、…あんっ…な、にかあった?ぁあ…」
吐息混じりになったものの、何とか届いたようだ
礼の動きがピタッと止まる
ややあってため息がこぼれ、「ごめん」と力ない声が聞こえた
そのまま優しく私を抱きしめ、すがりつくように頬を寄せる
何かを乞うような抱擁に、胸がキュンとして苦しい
何があったのだろう?
顔を見たくて礼の腕に手をかけ体を引くと、
バツの悪そうな顔にちょっと切ない瞳が見えて、妙に胸がざわついた