覚悟はいいですか

「礼?…」「何でもない、ごめん」

訊かれたくないのだろう、被せるように遮られたことに、
『今向き合わなければだめ!』と直感が告げる
大きく息を吸い込み、背を向けようとする彼にできるだけ優しく、
でもはっきりと語りかける

「何があったか聴かせて。
全部受けとめるから、目を逸らさないで」

礼の背中がピクッとして動かなくなった
私はその背中をじっと見つめて待つ

やがてため息をつき、ぼそっと「敵わないな」と自嘲するように呟いて、礼が振り返った

私の肩に手を置き、目を合わせる

「分かった、ちゃんと話す」
と言ってくれてホッとした

落ち着いて話をしたいからと、私達はまずそれぞれ入浴を済ませ、寝仕度を整える

キッチンでカモミールティーをいれ、寝室に入ると、
礼はベッドに寝転んで、天井を睨むように視ていた

私に気づくと一瞬眩しそうに目を細め、
起き上がって、ベッドの縁に腰掛ける

カップを渡し、「ありがとう」と受けとる彼の隣に座り、話し出すのを待った
 
「今日、両親に会ってきた」

しばらくカップに口をつけていたが、やがて目の前の壁を見つめて話し出す
私はその一言に驚いたものの口は挟まず、彼を見つめて続きを待った

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