覚悟はいいですか

『・・・今現在、分かっていることはそれだけです
誠に申し訳ございません!!』

「ジョルジュは?あいつはどうした?」

「現場には血痕が残っていました
おそらく抵抗したものの、負傷して意識のないまま連れ去られたかと」

「っ!」
クソッ!甘かった……

『礼様?礼様!?・・・』

志水の声が遠ざかっていくーーー
堂嶋への怒りと、それ以上に未熟な自分自身へのそれで目の前が真っ赤になる

紫織、紫織どこにいるんだ?
何故、今日に限ってそばにいなかったんだ、俺は!

紫織は無事だろうか?俺は、俺はいったい何を・・・?


「ああ、・・・・あとはこちらで。ああ・・・わかった」

ふと兄の話し声がして意識が現実へと引き戻される
怪訝に思って声の方を見やると、いつの間にか俺のスマホは兄の手にあった
俺は…頭を抱え蹲っていたようだ

通話を終えた兄が、画面をタップして俺を見た
「智兄さん・・・」

「立てるか?」
低く柔らかい声は落ち着いている
微笑みながら、手を差し伸べてくれた

「私に任せろ。彼女は必ず見つけてやるから」
不敵に笑う顔に、飽和状態だった頭がスッと冷えた

そうだ、呆けている場合じゃない!冷静になれ!
必ず守ると誓った、そのための8年だったはずだ
何としても紫織をこの手に取り戻すんだ
まだだ、まだできることはあるはずだ!!

兄の手を取り、立ち上がる
スマホを受け取って内ポケットにしまう
兄はいつもの泰然とした顔に戻り、志水から得た情報を俺に伝える

「目撃者の話では紫織さんを襲ったのは外国人のようだ。
あっという間だったが、英語で怒鳴っているのを聞いた人がいる」

「外国人?」
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