覚悟はいいですか

「礼様、申し訳ございません」

「…謝罪は後でいい。それより気を抜くなよ」

狭い車内で志水が膝に額をこすりつけるように頭を下げた

俺たちを乗せた箱型トラックは堂嶋の別荘から山ひとつ離れた寂れた空き家に停まっている
別荘からは見えないが、衛星からの映像を受信できるから様子が手に取るようにわかる

紫織たちを攫ったワゴンは兄の言った通り、堂嶋の所有する別荘に向かった

もう日が沈みかけている
早く助けに行きたいが、紫織を盾に取られたら俺達に勝機はない
暗くなってから奇襲をかけ、中の奴らを表に誘い出してから、
俺と志水で別荘に侵入し、紫織とジョルジュを救出する手筈だ

あの外国人は、やはり金で雇われた傭兵だった
スーツの2人も堂嶋家のSPでかなりの腕だと調べがついた

こちらは精鋭ぞろいだが、堂嶋側の人数が如何せん多い
厳しい闘いになるが、負ける訳にいかない

「行くぞ!散開!」

一斉にトラックを飛び出し、林の中へ消えていく

俺と志水は一番最後に荷台から出て走り出し、別荘の裏手を目指したーーー

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