覚悟はいいですか

動きを止めた紫織の様子に、公彦は満足そうに笑みを深める

横向きのままベッドに倒れ伏している体の上に跨り、その曲線を確かめるように
頭から首筋、肩、腕へと手を這わせた

その手が手首を拘束するロープの上で止まる

「ああ。これはもう必要ありませんね」

そう言うと懐から折り畳みナイフを取り出し、ロープを切った
体を下にずらし、足首のそれも切る

紫織の目がぼんやりとナイフを見ていた

「痕になってしまいましたね…」

足首に愛おしそうに顔を寄せて頬ずりし、唇を押し付ける
ふくらはぎに添えた手は、徐々に太ももへとのびてきた

・・・いやだ、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い・・・

目の前の出来事を心が受け付けないせいで
思考は無限ループのように同じことをグルグルと繰り返す

「い、やあ……」

掠れたような声が微かに洩れた

目の淵に涙がにじみ、視界がぼやけ始めた時、

『紫織』

フッと礼の顔が浮かんだ


< 178 / 215 >

この作品をシェア

pagetop