覚悟はいいですか

「あ、気づいたのね。どう?
痛いとこはない?」

「綾乃さん……。どうして?」

「ん、まずはお薬飲もうか。
話はそれからね」

そう言って、綾乃さんは私が起き上がるのを支え、口元に湯呑をあてがった

薬は苦かったけど、それを飲まないと教えない!と言われてしまい、しかたなくエイっと一気に飲み干した

「……ありがとうございます」

「ん。どう、気分は?」

「重だるさはありますが、吐き気等はありません」

「そう、よかった。紫織の寝てる間に医者にも見てもらったけど、骨折もなく熱が高いわけでもないから大丈夫とは言われたんだけどね。まあ、少し落ち着いたらきちんと精密検査を受けてもらうけど」

「そんな…」
大袈裟ですと言おうとしてやめた

綾乃さんが私の頬に触れて、苦虫を噛んだような顔をしてたから

「あいつめ……女の顔を傷つけて。礼も礼だわ。あとでお仕置きしなきゃ」

何やら不穏な台詞が聞こえたが、目を合わせるとにっこり微笑まれたので
……聞かなかったことにした

ひと眠りして、私の体は普通に動く分には支障がないまでに回復したようだ
さっきは起き抜けのため体が固くなっていたが、今はだいぶほぐれ、はたかれた頬の痛みや
所々細かい傷はあるものの目立った問題は感じない

それを確認した綾乃さんは、どこかに連絡をすると、真新しいゆったりめのニットとロングのフレアスカートを渡して着替えるよう促した

「着替えたら礼のとこに連れてくから」

訳が分からないながらも、そう言われては従わざるを得ない

シンプルながら上質な服に着替えると綾乃さんが軽くお化粧直しを施しながら、少しだけ教えてくれた

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