覚悟はいいですか

《side 礼》

「久し振り、というほどでもないかな。
海棠礼くん?」

「はい。お会いしたのは半月ほど前でしょうか。徳永様」

書院造りの薄暗い部屋で、俺は御前こと徳永光右衛門と対峙している

友和さんが何故あの場にいたのか、用意された車で話しながらも、彼は雇い主については暈していた
だが話を聞くうちに、俺はおぼろ気ながら徳永氏が咬んでいるのではと推測した

そして目的地が近づくにつれ、推測は確信に変わる
帰国してすぐ父親に連れられ、この屋敷に来たことがあったからだ

「仁くんは息災かね」

「はい。お陰様で」

「それは重畳」

ここまでは挨拶。本題はここから、だ

「御前、あなたは一体何をお考えですか?」

「ほっほっほ。次男坊どのはせっかちのようじゃな」

俺の顔を見て、人の悪い笑みをニヤリと浮かべた

「その顔、薄々事情を分かっているようじゃが?」

「おおよそは。根拠はありませんが」

視線を外さない俺の前で、徳永氏は懐から煙管(キセル)を取り出した
刻みタバコを詰め、火入れの炭で火を付ける
軽く吸い込み、長々と煙を吐くと、煙の消えた先を見ながら

「聴かせてくれるかの?」

と言ってきた

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