覚悟はいいですか

「この案件を無事解決し、山口さんと彼女の未来を守ることができるのか、私をお試しになりたい方がいらしたからでしょう、その襖の向こうに」

途端に徳永が射るように俺を見る
ここで怯んではいけない
俺は胆力を振り絞って、視線を受け止めた

キーンと音がしそうなほど張り詰めた空気が室内に満ちる
睨み合っていたのはほんの数秒だろうが、俺には永遠にも感じる時間が過ぎたーーー

と、そこに、

「御前、」

凛とした声が響いた
その主は俺の想像していた通りの人だった

徳永のまとう空気が弛む
同時に襖が開き、Athena会長・織部薫が現れた
その後ろには紫織と綾乃さんが控えている

「もうそこまでで結構でございます」

そう告げると、今度は俺の方を向いて
きれいに三つ指をつき、頭を下げた

俺は織部会長に正面を向け、会釈を返す
彼女は頭をあげ、ニコッと笑んで話し出した

「改めてご挨拶させていただきますね。
紫織さんがお勤めのAthenaで会長をしております、織部薫です。
この度は海棠様に多大なご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした」

開口一番、謝罪されて驚いた

だがすぐに居住まいを正した

「海棠ホールディングスで事業開発部長を拝命しております、海棠礼です。

それで、私はあなたの出した試練に合格できましたでしょうか?」


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