覚悟はいいですか
「君が連絡くれなかったから、
こいつ、ちょっと落ち込んじゃってね…
俺に泣きついてきたんだよ」
綾乃さんに説教されてる礼を横目に、友和さんが私にそっと教えてくれる

「君もその…いろいろあったから、始めのうちは気長に待てと言ったんだけど、あんまり熱心に連絡先教えてくれって言うからさ」
「それならこの誓約書にサインしたら、機会をつくってあげるって取引したの」
綾乃さんがバッグから一枚の紙を取り出す
礼は
「あ、それダメ!やめて下さい!」
って焦ってたけど、あっさり友和さんに押さえられる
私は紙を受け取り、読んでいくうちに目を見張った

『誓約書
私、海棠礼は山口紫織さんに対し、
紳士的振舞いを徹底し、
彼女の許可を得ない限り、
友人の範囲を越えるような行為は
しないとここに誓います
○○年 8月吉日 海棠礼』

あんぐり口を開けてしまった
だってご丁寧に捺印までされているし

全然守ってないけど~とジト目で訴える
当の礼は頬を朱に染めながら唇を突きだして
そっぽ向いちゃって・・・

でも、そっか
何かここにくるまでいろいろ悩んだけど、
ちゃんと綾乃さん達は私のことを考えてくれてたんだ
そう思ったら、
心の奥にポッと小さな灯りが点ったような気持ちになって、嬉しくて思わず笑顔になった

くすぐったいような気持ちをやり過ごしていると、綾乃さんが優しい目で私をみて言った

「しお、正直言うと、私は礼とあなたがくっつこうがダメになろうがどっちでもいい。
あんたが幸せに成りさえすれば」

「綾乃さん・・・」

「でも今の礼は8年前とは違うと思う。
あんたとちゃんと向き合える覚悟を持ってる。
いきなり恋人は無理だと思うから、
まずは昔馴染みの友人として、
礼のこと考えてみたらいいと思うよ」

そして礼をみて
「あんたもちゃんと待てるわよね!?」
と念押ししていた

やっぱり綾乃さんは私のことをよくわかってる。もしかしたら私以上に・・・
うん、礼と向き合ってみようかな。

誓約書と言うお守りを得て、礼との関係を少しだけ前向きに考えてみようと思えた
ありがとう、綾乃さん、友和さんーーー
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