覚悟はいいですか
「来月の創業50周年記念パーティー、あんたも出ることになったから」

「へっ?」

金曜日の昨日、同期の京橋麗奈(きょうばし れいな)が、彼女お気に入りのbarでプロジェクト成功のお祝いをしてくれるというのでついてきたら、とんでもないことを言い出した

「ドレスはこっちで用意する。ヘアメイクは専属の大澤さんが見てくれるわ。
あんたは盛ったほうがいいでしょ?」

いやいやいや、ちょっと待って!

「レセプションのホステスは秘書課でしょ?
なんで経理の私が行くのよ!?」

「…あんた、佐伯部長に華を見せたでしょ?
部長が会長室に乗り込んで、会長の耳にも入ったのよ」

「うそ・・・」

「ばれないとでも思ってたの?佐伯部長は会長の娘婿よ。会長に言えば何とかなると思ったんじゃない?
営業部にあんたを引っ張ろうと直談判に来たんだから。
もちろん速攻で却下されたけどね」

麗奈は会長専属の秘書だから、一部始終見ていたのだろう
呆れてものが言えないという気持ちがありありとにじみ出ている。激しく同感だ

だが

「プロジェクトの時は社内のことでしょ。
周年パーティーは社外の、それも結構なセレブがゲストじゃない。私がいたらいろいろとまずいと思うけど?」

まだ華だった時、あることで会社に多大な迷惑をかけた
それは私がやめるとかですむ問題ではなく
(もちろん犯罪ではない、断じて)
ただその時の先方との約束で、私は秘書課から経理課に移動
さらに今後はわが社の会長に認めてもらえなければ、お付き合いも結婚もできないという契約を結んで、ようやく不問になった

周年パーティーともなればかなりの規模だ
当然その時の相手も招待されるし、私がいたら不快にさせてしまうだろう
私だって二度と相対したくない・・・

そう思うのに、麗奈の考えは違うようだ

「秘書課を移動することにはなったけど、華をやめることは条件にないわ
華が秘書課でなければならない決まりもない
だから、経理部のあなたが華としておもてなししても何ら問題はないわ

・・・これは会長のお考えでもあるのよ」



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