DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
さよ子は両眼がなかった。
さよ子は抜け殻だった。
誰にやられたんだろうって、状況証拠はもうそろってる。
余計なことしてくれやがって。
おれでもそんな怒りを覚えるくらいだから、さよ子にえらく入れ込んでる総統のおっちゃんが冷静でいられるはずもない。
さよ子はおれのほうへ両手を伸ばして、一歩、一歩、ぐらつきながら歩いてくる。
黒髪がゆらゆら、サラサラ揺れる。
白い頬には血の涙が流れている。
赤い唇から濡れた舌がのぞくのが、強烈に色っぽい。
場違いだけど、おれは見惚れた。
さよ子は、か細い声を上げて鳴いた。
「ああぁぁぁあーあぁぁあぁああー」
いい声だなと思った。
息をついたら、カラカラに渇いてる上に煙に刺激された喉から、また咳が飛び出した。
止まらなくて、体を折って咳き込む。