DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
さよ子が悲鳴を上げた。
本能的に恐怖を感じたんだろう。
おれはさよ子を抱きしめた。
柔らかくて温かい体は確かに生きているのに、呼んでも応答はないんだ。
さよ子はおれの首筋に噛み付いた。
激痛。肉を噛み千切る音が耳元で聞こえた。
地面が波打った。
太い柱があっさりと折れて、海牙の姿がコンクリートに呑まれて消えた。
蛍光灯が弾けて燃えた。
血の匂いがした。
さよ子がおれの首に口を寄せた。
熱い息が掛かった。
痛みが脈を打っている。
ごうっ、と、ものすごい音があたりいっぱいに満ちた。
怖かった。
おれは叫んだ。喉が焼けるように痛んだ。
思念の暴流がおれをつかんで取り込んでいく。
イヤだ。怖い。
おれはおれのままでいたい。食われたくない。
額が割れるように痛い。
食われた首が痛い。
足が地面のひび割れに噛み付かれて痛い。
痛い痛い痛い、全身がバラバラになりそうに痛い。
恐怖が体いっぱいに膨れ上がって、はち切れそうで痛い。